先生こそ、自分らしく輝いて。世界一有名な日本人こんまり仕掛け人・川原卓巳さんに聞く、自分らしさの見つけ方
日本でお片づけブームを巻き起こした「こんまり」こと近藤麻理恵さんのプロデューサーであり、私生活においてもパートナーである川原卓巳さん。
魅力的に生きる大人を増やし、子どもたちに生き方の多様性を示すために、プロデューサーとして日本で新たなプロジェクトを始めようと動き出している。
その第一歩として、昨年12月に初の書籍『Be Yourself 自分らしく輝いて人生を変える教科書』を出版し、「先生こそ、自分らしく輝いてほしい」と語る川原さんに、自分らしさを活かして人生を輝かせるヒントについて聞いた。
1984年広島県生口島生まれ。公私共にパートナーである片づけコンサルタント近藤麻理恵さんのプロデューサーとして活躍。2016年にロサンゼルスに移住し、Netflixの番組制作等を手掛ける。プライベートでは4歳と5歳の女の子の父。2020年初の著書『Be Yourself~自分らしく輝いて人生を変える教科書~』出版 。
一人の人間として、暮らしを楽しむ姿が大切
——川原さんご自身が「自分らしさ」に気づかれるまでのお話を聞かせてください。
僕は広島の田舎で育っていて、旅行にもあまり行かない家庭だったので、住んでいる場所以外のことはほとんど知らないという幼少期を過ごしました。
地元で仕事といえば、当時は造船業か車を売る仕事か、運送業や土木業がほとんどだったので、学生時代に雑誌やテレビで知る都会はキラキラ見えて、憧れがありました。
これは本にも書いていないことですが、実は高校時代に大きな病気を患ってしまい、高校の卒業式にさえ出ることができませんでした。受験勉強で自分を追い込み、身体に無理をかけ過ぎてしまったのです。
生死に関わるような大きな病気で、一歩間違っていたら死んでいました。
その経験をしたからこそ、真剣に「生きること」に向き合うことができ、「このまま死んだら後悔する」という気持ちから、田舎を出ることに決めました。
——自分の命に向き合ったことで、本気で「生きる」ことを考えられたのですね。
はい。ですが、念願だった東京の大学に行ってみたら、本気で生きることを考えている人は少なくて、友達もできませんでした。
今思えば、真剣に人生を考える学生の方が珍しかったのかもしれませんが、僕にとって大学は居心地の良い場所ではありませんでした。
そこで、大学に籍を置きながら社会を体験しようと、アルバイトに力を注ぐようになりました。また当時、「いつか市長になって、世の中をよくしたい」という思いがあり、インターンで国会議員の秘書をしていたこともあります。
最前線でビジネスをする経営者たちとも関わり、選挙も経験しました。多感な学生時代に、ある意味特異な経験をしたことが、僕にとって「自分らしさ」を見つける原体験になったと思います。
自分はどこに身を置いて生きていきたいのか?を考えたときに、議員秘書のインターン時代に感じた「人と関わる」ことの難しさに興味を持ち、コンサルタントの仕事に就くことを決めました。
その頃に、学生時代からの友人であった麻理恵さんと再会し、今に至ります。
――現在はご家族でアメリカを拠点に活動されていますが、二人のお子さんの子育てを通して、日本との違いを感じることはありますか?
娘をモンテッソーリ教育の学校に通わせているのですが、そこにいる先生方がとても自由なんですよ。
例えば、子どもたちを迎え入れる大切な日に、先生が着ていたのは露出の多いワンピース!日本の先生の服装との違いに、カルチャーショックを受けました。
でも、先生方がオシャレを自由に楽しんだり、終業時間には帰宅してプライベートも楽しんでいて、その楽しかったエピソードを子どもたちに話している姿が日常にあります。
そういう日常を楽しむ先生の姿を通して、きっと子どもたちは「大人って楽しそうだな」という気持ちになりますよね。
一人の人間として、暮らしを楽しんでいる姿や、成功も失敗も一緒に体験して生きていくことが、これからの先生や学校に求められていくことなのでないかと感じています。
学校の「枠」を超えて、つながる
——川原さんは今、自分らしく生きる人を増やすために「教育」について学びを深めているとお聞きしました。
そうですね。日本の教育現場の課題や現状についてお話を聞いたり、本を読んで理解を深める段階にあります。
その中で感じるのは、150年前から変わっていないと言われている学校の仕組みは、何かを変えたいと思っている先生にとっては「動きづらい環境」になっているのではないかということ。
これはプロデューサー的な視点でもあるのですが、動きたい人が動けない環境にいることは、精神的な疲弊を感じ、摩擦が起きやすい状況にもなります。
——そういった状況を変えるためには、どうしたらいいのでしょうか?
何かを変えたい人は今までとは違うことをするので、周りから「浮いている人」と見られることが多いです。だからこそ、孤独を感じたり、やりたいことを我慢してストレスを抱えている人もいらっしゃると思います。
でも、人とは違う考え方や、やりたいことを行動に移すことは、現状を変えるキッカケになりますよね。とは言え、一人の力ではどうにもならないこともある。
だからこそ、同じような気持ちでいる人や、動きたいと思っている人と「つながる」ことが必要です。
学校という「枠」を超えて、世の中にあるさまざまな職業の人とつながることをおすすめしたいです。
僕みたいに海外で仕事をしている人間や、ビジネスをしている人、多種多様な仕事をしている人たちと話せる場所に飛び込むことは刺激になって良いと思います。
今はオンラインでそういった場がありますし「先生の学校」に参加している方であれば、絶対に楽しいと思いますよ。
先生以外の職業の方から授業をしてもらうのもおもしろいかもしれないですね!
――新しいつながりを自ら作ることが大事ですね。
そうです。日本の中ではまだまだ同調圧力が強いことから、やりたいことをするのは「わがまま」と見られることがあります。ですが、誰かが言ったことに従うだけの時代は終わりました。
これからは、違和感を感じることに対して「こうした方がいいんじゃない?」と自分の考えをしっかり提案できる人が求められていきます。
文化の違いもありますが、日本人は自分の意見を言葉にして表現することが苦手ですよね。僕自身も苦手でしたが、アメリカに来てからは、むしろ自分らしさを主張しないと仕事ができないので、すごく鍛えられました。
今の子どもたちは、自分を表現する力を必ず求められます。
そのために、学校の中でも自分らしさを出せるような環境づくりや関わり方が必要だと思っています。
——先生自身が自分を表現することは、子どもたちにも良い刺激になりますね。
そうですよね。日本では、先生は「こうあるべき」という姿があって、失敗することが許されないような風潮もあります。
だけど、先生方には自分の失敗をたくさん子どもたちに語ってほしいなと思います。
人間らしく生きている、そのままの姿を見せることは悪いことではないはずです。失敗から学ぶことを教えることもできますし、子どもたちが失敗を恐れない大人に育つことにも繋がると思います。
僕も今に至るまで、うまくいかないことがたくさんありました。成功したことだけが取り上げられますが、むしろ失敗の方が山ほどあって、それで本を10冊書けるぐらいです(笑)
これからの教育はGIGAスクールの実現もあり、知識に関しては誰もが容易に習得できるようになります。
そうなったときに、先生に求められる役割は何か?と考えると「知識では得られない体験に関わる」こと。
一人ひとり、子どもたちの目を見てじっくり話を聞いてあげることや、先生自身の失敗談をたくさん話したり、心を開く経験や体験をさせてあげることが大切な役割になってくるのではないでしょうか。
先生自身がまず「自分」を最初に大切にしてほしい
——先生自身が「自分らしさ」を見つけるためのヒントを教えてください。
自分らしさって何かな?と考えてみると、まずは自分が好きなことや、やってみたいことからスタートすると良いと思います。
自分らしさが分からなくなるときというのは、好きなことができない状態が続いていたり、やってみたいことができない環境にい続けるときです。
もちろん、そのまま生きていくこともできると思うのですが、その状態が嫌で苦しいと感じるのであれば、やりたいことができる環境に移動することはできますよね。
今できることから、一歩踏み出して動いてみる。そこから「自分らしさ」を見つける道は拓けてくると考えています。
——今後、教育に関わることをやっていきたいとお聞きしましたが、具体的にどんなことをお考えですか?
今は、「学校を作る」というビジョンがあります。これからの時代に合った教育や学校づくりを、現状の教育現場を改革したいと考えている先生たちと一緒に作っていきたいと思っています。
何かを変えていこうとするときは、当事者だけで考えていくのは難しくて、ヨソ者(部外者)の存在が必要だと思います。
僕はビジネスが得意なので、ビジネス領域からそれを作っていくことができるし、教育の分野に長けている人たちとタッグを組みながら進めていきたいですね。
——最後に先生方へメッセージをお願いします。
学校の先生は、たくさんの子どもたちと関わる仕事なので、大変なこともたくさんあると思います。そんな仕事を選んで、今、「先生」の仕事をしてくださっていることに心から感謝しています。
だからこそ、先生自身がまず「自分」を最初に大切にしてほしいと心から思います。
これから僕ができることで教育の変革のためにできることはやっていくので、一緒に形にしていきたいです。
僕の夢は「世界平和」。
僕にとっての世界平和とは「全ての人が自分らしく生きている状態」です。
先生自身が、自分らしく生きることは世界平和につながっていくことだと思ってもらえたらうれしいです。
〈取材・文=わだ ゆきこ〉
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