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スポーツ指導者こそ知っておくべき、“身体的な性差”に関する正しい知識!女子アスリートの指導に必要な知識を問う「1252公認 女子アスリートコンディショニングエキスパート検定」とは? <PR>

スポーツ指導者こそ知っておくべき、“身体的な性差”に関する正しい知識!女子アスリートの指導に必要な知識を問う「1252公認 女子アスリートコンディショニングエキスパート検定」とは? <PR>

「1252」。この数字を見て、何を思い浮かべるだろうか?
実は、これは1年間52週のうち、約12週間が月経(生理)期間にあたることを意味する数字。

月経は多くの女性にとって約1カ月に1回やってくる現象だが、その症状の強さには個人差があり、特にスポーツをしている場合は、パフォーマンスに大きく影響することもある。

日本人女性の初経は平均12.3歳、トップアスリートは12.9歳とされ、心身の発達に大きな影響を与える10代の月経問題には、部活動や体育の授業でサポートする先生やコーチの知識が不可欠だ。スポーツをする女子学生や女子アスリートに接する大人には、正しい知識を持ってサポートすることが求められる。

そこで注目したいのが、「1252公認 女子アスリートコンディショニングエキスパート検定」。

女子アスリートのコンディショニングに必要な正しい知識を学べる、世界でも稀有な検定だ。検定の誕生経緯や込められた思いについて、競泳オリンピアンであり、一般社団法人スポーツを止めるなの代表理事も務める伊藤華英さんに話を聞いた。

写真:伊藤 華英(いとう はなえ)さん
伊藤 華英(いとう はなえ)さん
競泳オリンピアン/一般社団法人スポーツを止めるな 代表理事・1252プロジェクトリーダー


女子アスリートのコンディションを揺るがす“身体的な性差”の影響


「1252プロジェクト」は、女子学生アスリートに向けて「スポーツ×生理」の啓発を行うために立ち上げた活動で、「1252公認 女子アスリートコンディショニングエキスパート検定」は、学校や部活動の指導者から「女子生徒や選手の身体的・生理的な課題を感じているが、どこで学べば良いのか分からない」という声が多く寄せられたことから生まれた検定です。

特に男性指導者には、月経について学ぶことに対する恥ずかしさや、インターネットで正しい情報を見分ける難しさがあるという悩みが多くありました。これらのニーズに応えるため、約2年間かけて検定の教科書を作成し、この課題解決に取り組んできました。


男女を分けるつもりはありませんが、女性と男性には身体的な性差があり、内臓や生殖機能にも違いがあることは事実で、スポーツにおいてはそうした性差がパフォーマンスに影響を与えることは確かです。

私自身、現役選手時代に月経やPMS(月経前症候群)などの身体的な問題に直面し、その悩みを公にすることができませんでした。むしろ隠さなければならない、言うべきではない、パーソナルな問題だという認識が強かったです。

その経験から、この問題はスポーツ界、特に女子アスリートや女子学生アスリートにとって重要な側面であり、何かしらの支援が必要だと強く感じたことから動き出しました。

もう一つ印象深かった出来事は、私が既に引退していた頃に雑誌『NUMBER』に書いたコラムです。その当時、海外の女性選手が「生理で調子が悪い」と語るインタビュー記事が掲載され、編集者から「それって本当ですか?伊藤さんの経験も書いてください」と依頼されました。

あまり読まれないだろうと思いながらも書いてみたところ、予想以上に大きな反響があったんです。このテーマが多くの人々に関心を持たれていることに驚きました。

この反響をきっかけに、女子アスリートと生理の問題が社会的な課題であると強く認識しました。ただ、自分一人では解決できないと感じ、仲間を募り、広いプラットフォームで活動するために、1252プロジェクトを立ち上げました。


水泳は若い時期から多くの練習を積むスポーツですが、思春期に初経を迎えた当初は特に気にすることなく過ごしていました。しかし、高校生になってから20歳前後にかけて、ホルモンの影響が強くなり、生理前にはイライラや食欲増加、不安感が強くなり、練習がうまくいかないこともありました。

当時「PMS」という言葉すら知らなかったため、生理は「しんどいもの」「自分に悪影響をおよぼすもの」と思い込んでいました。

オリンピック出場が決まった頃、私は生理のタイミングを調整するために中容量ピルを使用しましたが、その副作用で体重が5キロも増えてしまって…。0.01秒でもタイムを縮めなければならない中で、体重増加の原因が全く分からず、非常に苦しい思いをしましたね。

引退後、1252プロジェクトが立ち上がり、婦人科の先生に相談したところ、「試合の3カ月前にはピルを飲まないように」とアドバイスを受け、ようやく体調の原因が理解できました。私はやってはいけないことを、しっかり続けてしまっていたわけです。

今振り返ると、ピルの使用自体は悪いことではなく、私の知識不足が大きな課題だったと感じています。

今は、低容量ピルや超低容量ピルなど、もっと選択肢を広げる重要性を改めて実感しています。プロジェクトの根底には、こうした私自身の経験や思いがありますが、それに加えて多くの方々の思いや経験が積み重なって現在に至っています。


先生にはちょっとした「センサー」を持ってもらいたい


一人ひとりの悩みや身体の状態をどう把握し、どのようにサポートしていくかのヒントを得られるため、学校現場でも大いに役立つ内容になっていると思います。2級を取得することで、部活動でも十分に応用できるのではないでしょうか。

部活動では、選手と指導者の関係がエリートアスリートとコーチのように密接でない場合が多いため、選手の状態をどこまで把握し、どのような声掛けをすれば良いのか、といった点が非常に参考になると思います。例えば、「生理痛で練習をどこまで特別にすべきか」という質問をよくいただきますが、この場合、「特別にする」のではなく、その選手の状態に応じた対応が重要になってきます。

基本的には、生活に支障が出て練習ができない場合は病院に行くべきです。休ませるだけでは解決しないこともあるため、その段階で専門家に相談することが大切です。


その通りです。この検定を学ぶことで、先生たちにはちょっとした「センサー」を持っていただき、生徒たちが健康を保ちながらスポーツに励むためのサポートをしていただけたらという意図もあります。

スポーツでは、一生懸命努力し、苦しさを越えて強くなることが求められますが、その過程で「この子の体調は大丈夫か?」と立ち止まって考えていただきたいのです。婦人科の先生も、学校現場で学生と接する大人たち、特に指導者や保護者が「これは病院に行った方がいい」とスクリーニングできると良いとおっしゃっています。

先生方が直接治療することはできませんが、正しい知識を持っていれば、「この子は無月経かもしれない」「PMSかもしれない」と気づいて、「今日は休んだら?」「養護の先生に相談してみたら?」と声を掛けることができるようになる。こうした小さな工夫ができるようになることが大切だと思います。

特にPMSは放置すると精神疾患に進行することもあり、精神科の受診が必要になることもあるので、指導者の方々には、選手に最も近い大人としてその視点を持ち、サポートできる環境を作っていただきたいですね。


体を理解することは、他者を理解すること


はい。検定は指導者向けですが、私たちが大事にしている軸は学生向けの授業です。出張授業やオンライン授業を通じて、学生たちに月経の仕組みや知識を伝えていますし、SNSでも学生が手に取れるコンテンツを提供しています。

出張授業では、月経の仕組みだけでなく、その症状も一人ひとり違うということも伝えます。生理痛は病気ではないと言われがちですが、実際には月経困難症や月経随伴症状など診断名がつくものであり、治療法にはピル以外にも多くの選択肢があるんです。人によっては飲める薬、飲めない薬もあるので、とにかく正しい知識を持つことが重要だと話しています。

例えば、教科書に描かれる卵巣や子宮が実際にはこんなに小さいことや、妊娠時には子宮が大きくなることなどを知ると、学生さんたちは驚きます。それがどれだけ体への負担が大きいかが想像できるようになり、「生理って本当に面倒だ」と話す学生たちも、私たちの話を聞くと「ちゃんとケアしなきゃまずいんだね」と理解してくれます。

自分の体のことを正しく理解し、周りの大人もその視点を持つことが、健康的な生活を長く続けるために大切です。学生たちにはもちろん、先生方にも同じ内容の授業を受けてもらっているんですよ。


まず、理解していただきたいのは、身体には性差が存在するということです。もちろん、個々の違いや権利を尊重することは重要ですが、性差がパフォーマンスや健康に影響を与えることも事実です。性差に関する議論は非常に難しい部分もありますが、スポーツの世界では男女の区別がされており、性差を理解することで、皆が同じ方向に向かえるのではないかと考えています。

昔は「男性のように練習しなければならない」という考え方が支配的でしたが、今は、女性は女性として、男性は男性として、または性別に関係なく、それぞれが異なる存在であることを認識することが大切ではないでしょうか。

さらに、生理痛などの体調に関しては、個人差があることを理解してもらいたいですね。例えば、ある学生が生理2日目がつらいと感じても、他の学生は生理前や3日目から5日目がしんどいこともあります。その違いを理解し、対応できる指導者の姿勢が大切だと考えています。

体を理解することは、他者を理解することにもつながります。特に日本のスポーツ界では男性指導者が多いため、変化を起こすには男性の力が不可欠です。そのため、指導者がこの視点を持ち、スポーツを通じて社会課題を解決していく方向に進んでいければいいなと願っています。


女性選手を指導するためには、この検定の知識は欠かせません。指導者の一言で病院に行けなくなったり治療を見逃すことがあるため、この知識がどれほど重要かを理解できると思います。

また、身近な女性パートナー、母親、姉妹、友人、生徒などを大切に思うのであれば、ぜひこの知識を身につけていただきたいです。学ぶことで、周囲の人々の可能性を閉ざさず、健康的な環境を作る手助けになるはずなので。



「1252公認 女子アスリートコンディショニングエキスパート検定」とは?

「1252プロジェクト」から生まれた、女子アスリートを指導する上で必要な知識を問う検定。月経課題を中心に、スポーツ医学・栄養学・メンタルヘルスなどの観点から、スポーツ界における女性特有の課題に対する知識や対策を学び、女子アスリートのパフォーマンス向上につながる知識を習得できる。

トップアスリートを指導する指導者から、学校教員、保護者まで、女子スポーツ関係者に広く知識を身につけてもらうことを目的に、2級と1級の2階級が設けられている。検定実施は年2回。個人受検はもちろん、学校や企業単位での団体受検も可能。


〈取材・文:先生の学校編集部/写真:1252プロジェクトご提供〉