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耳が聞こえない子どもたちにも、華やかな未来を。難聴児の未来の選択肢を増やす取り組み『デフサポ』 【PR】

耳が聞こえない子どもたちにも、華やかな未来を。難聴児の未来の選択肢を増やす取り組み『デフサポ』 【PR】

もしあなたに耳が聞こえない子どもが生まれたら、何をすればいいだろうか。
もしあなたが受け持つクラスに聴覚障害の子どもがいたら、どうやって導いていけばいいだろうか。

そんな不安に寄り添い、難聴の子どもの教育支援を行う会社がデフサポだ。

デフサポを立ち上げた牧野友香子さんは、自身も生まれたときから耳が聞こえない重度難聴者だ。耳が聞こえないながらも地域の公立学校に通い、友達にも恵まれ、青春を謳歌しながら楽しく生きてきたという。

そんな人生の選択肢を届けたいと、難聴児の華やかな未来づくりに取り組む牧野さんの取り組みについて話を聞いた。

写真:牧野 友香子(まきの ゆかこ)さん
牧野 友香子(まきの ゆかこ)さん
株式会社デフサポ代表取締役

2歳のときに生まれつき重度の聴覚障害であることが分かり、2歳半で初めて補聴器をつける。幼少期から口話による訓練を行い、幼稚園から中学まで地域の一般校に通い、聴者の友達に囲まれながら過ごす。神戸大学を卒業後はソニー株式会社に入社。人事で7年間勤務した後、自身に50万人に一人の難病を抱えた子どもが生まれたことがきっかけとなり、2017年にデフサポを立ち上げる。現在は、自身の経験を生かして、聴覚障害児の親への情報提供やことばの教育支援、企業での就労支援や学校での啓発活動などに取り組む。


「ことばの力」を育む支援


聴覚障害を持つ方のコミュニケーション手法といえば、手話を思い浮かべる方が多いと思いますが、耳で音を聞きながら会話をする聴覚活用や、相手の口の形を読んだりして話す読唇術などといった、口話という方法もあります。

昔は補聴器をつけてもあまり音が拾えず、口話教育は辛いものと受け止められていましたが、近年は補聴器の進化や人工内耳という選択肢が入ってきたことで聴覚活用がしやすくなり、比較的自分の耳でことばを聞いて話す人が増えてきました。

ただ、聴覚活用がしやすくなったといっても、家庭での声掛けやことばを育てるということは、変わらず必要です。私たちデフサポでは、そこのお手伝いをしています。

例えば、何かを飲むための容器には、コップやコーヒーカップ、湯呑みやワイングラスなどいろいろありますが、一般的な日常会話では、耳が聞こえる・聞こえない関係なく、コップと言うことが多くありませんか?

だから、コップはちゃんと伝わります。しかしコップのインプットしか入らないため、将来的に湯呑みが何か分からない状態で年齢を重ねることになります。その結果、語彙不足が顕著に出てきてしまいます。

日常生活の中で使う「生活言語」を獲得すれば会話はできますが、小学校3年生以降は学習につまずき始めるようになる子が多いんです。なぜなら、小学校中学年以降の学習では抽象的な内容や、新しいことばを論理的な文章で説明される機会が増えてくるからです。

こういうものを「学習言語」というのですが、ことばの土台ができていないと、文字は読めても、書かれている内容までを理解することが難しくなる。ことばの力がないと、その先の進路や就職といったさまざまな場面で、選択肢が狭くなってしまいます。

そうならないように、生活言語だけでなく、学習言語もしっかり習得できるようになるためのことばの土台作りを、保護者の方と共に取り組んでいます。


一番大きなきっかけは、私自身に難病を抱えた子どもが生まれたことでした。ロールモデルがいなかったため、この子はどんな風に歩くのか、小学校には行けるのかといった、この先の見通しが全く立たないことがとにかく不安でした。

そこで、ふと思ったんです。難聴の子どもたちを持つ保護者の方は今、どうなんだろう?って。

当時は今ほどSNSも多くなく、情報発信している難聴当事者の人も少なかったため、耳が聞こえない人との会話と言えば手話というイメージがすごく大きかった。でも、私のように手話は使わなくても口話でことばを理解して会話できるし、人生楽しく生きている人もいる。そういうことをもっと知ってもらいたいなと思いました。

また、立ち上げ前に耳が聞こえないお子さんを育てる保護者の方40人ほどにヒアリングしたところ、将来の就労も心配だけれど、とにかく“今”の方が困っている。今どうやってことばを教えたらいいか分からないという悩みが最も多かったんです。

確かに、乳幼児期の頃からことばの力を育んだ方が、将来直面するであろう問題も小さくなる。そう考えて、自分の経験も生かしながらことばの力を育む支援をするためにデフサポを立ち上げました。


見えない困りごとは、たくさんある


はい。私が通った地域の小学校には支援級がなくて、難聴の子のための学級もなかったんです。なのでそもそも選択肢がなく、必然的に通常学級に入るしかありませんでした。

母はろう学校という選択肢も提示してくれましたが、幸い私は読唇術が得意だったのと、コミュニケーションが好きなタイプだったので、地元の学校が大好きでした。皆と一緒の学校に通うのが自分にとって当たり前だったので、小学校も中学校も地域の公立学校に通う選択をしました。


細かい困りごとはいろいろありました。例えば、先生が授業中に言うテスト範囲が聞き取れなかったり、授業中は先生の口元をずっと見ているのでノートが取れなかったりしましたし、一日6時間ある授業中ずっと唇の動きに集中し続けることもすごく疲れました。

なのでだんだんと授業を聞かなくなり、教科書だけ見て終わらせてしまうようになって…。ただ、テストの出来は悪くなかったので、先生からは、テストはそれなりにできるけれど授業態度はあまり良くなく、やる気が見られない生徒に見えていただろうなと思います。


難聴児は、困っているという状態が周りからは見えにくいですよね。授業中は先生の方を見ているので、しっかり話を聞いているように映るし、テストもそれなりにできていたら、困っていなさそうに見えてしまう。

それに、小学生の頃の私は、何に困っているのかすら自分で気づいていなかった気がします。

だって、他の子たちがどれだけ労力をかけずに授業を受けているかなんて知らないし、自分が感じていることが、他の子にとっても当たり前のことなんだと思っていたので、自分だけがどうやら他の子と状況が違って、しんどい思いをしているんだということは、全く考えたことがなかったんです。

困っている様子がなければ、先生も気づきませんよね。


より多くの人に、難聴に関する興味関心を持ってもらいたい


学校やクラスに難聴児がいるので、子どもたちの難聴理解を進めるために話をしてほしいというご依頼などをいただくことも多く、これまでに小学校や中学校など、60校近くで講演をさせていただいています。

耳が聞こえないとどういう場面で困るかといった具体的な話はもちろん、そもそもの耳の仕組みの話や難聴児にはどんな風に音が聞こえているのかといったお話を、私自身の体験談も共有しながらお伝えしています。


耳が聞こえない人が特別扱いされずに、もっと生きやすい社会になったらいいなと思っています。

難聴と聞いて周りが構えてしまうのは、どうしたらいいか分からないからだと思うんです。だからこそ、難聴についての正しい情報をもっと知ってもらいたい。

「耳が聞こえないんだったら、こんなことをしたらいいんだろうな」と自然と想像力を働かせられる人が増えれば、今、私たちがサポートしている難聴の子どもたちが大きくなったときにはもっと暮らしやすい世の中になっているんじゃないか。そして、そんな社会は誰にとっても過ごしやすい場所なんじゃないかと思っています。

入り口がドラマでもYouTubeでも何でもいいので、少しだけでもアンテナを張って知っていただけたらうれしいです。


〈お知らせ〉
牧野さんは、YouTube番組『デフサポちゃんねる』にて、難聴について気軽に知れるさまざまな情報を発信されています。よろしければご連絡ださい。


〈取材・文:先生の学校 編集部/写真:ご本人提供〉