NewsPicks Educationと共に取り組む、対話する学校。学校改革は、9割がいいと言っても、1割の声を大切にしたい [PR]
静岡市にある私立の中高一貫校、静岡大成高等学校では、学校改革を2023年度から進めている。
「時代に即応する新しい人材の育成」を建学の精神に据える同校が、改革の最初の一歩として取り組み始めたのがチーム担任制の導入と、対話を大切にする学校づくりだ。
改革を始めて約半年が経ち、どのような変化が生まれてきているのだろうか。改革を牽引する教務部長の横山力さんと、教務部の和田真由子さんに話を聞いた。
教務部長/理科教諭
和田 真由子(わだ まゆこ)さん
教務部/国語科教諭
安心感が生まれたチーム担任制
——2023年度より学校改革に取り組まれているそうですが、どのようなきっかけで始められたのでしょうか?
これは胸を張って言えるのですが、本校の生徒は思いやりのある生徒が多く、先生方もそんな生徒たちに対して熱心に向き合っている温かい学校です。
だからこそ、もっとより良い学校にできるのではないか、生徒たちに心から「静岡大成高校に来てよかった」と思ってもらえるために何ができるだろうか、そんなことを考え続けてきました。
昨年度は、他校や通信制高校に転学してしまう生徒が多く、何かしら手立てを考えていきたいと課題意識を持っていました。そこで導入したのがチーム担任制です。
また、「総合的な探究の時間」のアップデートを模索していたところ、たまたまNewsPicks Educationを見つけ、問い合わせをすると、NewsPicks Educationの蒲原さんが親身に話を聞いてくださいました。
そして、対話を大切にする学校づくりを目指して、教員研修や高校1年生の総合的な探究の時間を、一緒に作っています。
——チーム担任制の導入と、対話を大切にした学校づくりに挑戦されているんですね。チーム担任制はどのような仕組みで行っているのでしょうか?
チーム担任制は、クラス担任を1人に固定するのではなく、学年を受け持つ複数の教員がチームとなり、複数の視点で生徒を見守るシステムです。2クラスを3人の教員で担当しています。今年度入学した高校1年生から開始しました。
生徒にとっては、例えば女子生徒の場合、男性の先生よりも、女性の先生だからこそ理解できることもありますよね。チーム担任制にすることで、相談相手の選択肢が増えます。それは保護者も同様です。
何か起きたときに、お互いに選択肢があるというのは、生徒にとっても、保護者にとっても、教員にとっても、いい状態なのではないかと思います。
私は年齢的に体力の心配があったり、家庭環境も変化する中で、どれくらいこれまでと変わらず仕事をしていけるのだろうと、少なからず不安を抱えていました。
そんな折に、チーム担任制の導入の話を聞いて、私のような気持ちを抱えた教員や、他にもさまざまな事情を抱えた教員の不安が軽減され、働きやすくなるのではないかと思いました。
実際に1学期に春の遠足でバーベキューをしたのですが、これまでは自分のクラスの火起こしは担任の責任のもと行っていたので、1人で汗だくになって必死に火を起こしていました(笑)。それがチーム担任制になって、得意・不得意で役割分担ができるようになったので、火起こしが得意な先生が快く引き受けてくださいました。
些細な出来事ですが、そういう体験をすると、私の得意が発揮できる場面では自然と「そこは私がやるよ」という気持ちが生まれます。
本当に困ったときに、自分だけで抱え込んで苦しかったこれまでのことを思うと、チーム担任制になったことで、安心して働くことができるようになりました。また、先生たちに対するリスペクトや親しみ、そんな気持ちも強くなっています。
——得意・不得意も分かち合えるし、関係性もより良くなっているのが伝わってきます。
これまでも「抱え込んでるものを共有しよう」って綺麗事では言うんですけど、実際には一人で抱え込むことが多かったと思うんです。でも今は、一人で背負っていた重荷を本当の意味で共有できていると思います。
産休明けの女性教員も、男性教員2人とチームになっていますが、急に子どもが発熱した際でも、「僕らがいるからいいですよ」って、自然にそういう声掛けができる雰囲気があるので、チーム担任制は、教員にとっては働き方の改善にもつながっているのと思います。
困ったときはお互い様の精神で、良い関係性が育まれているように感じています。
対話で職場の関係性が柔らかに
——今年度より学校目標も刷新し、対話を大切にすることを宣言されたそうですね。対話の文化がチーム担任制にも良い影響を与えているのではないかと想像します。
静岡大成が大切にする3つのコンピテンシー(行動特性)を、自律・対話・行動に決めました。
対話については、生徒だけでなく教員にも必要なコンピテンシーだと考えています。結局、チームで動くときにも、大人同士が感覚ではなくお互いが思っていることをちゃんと伝えられる関係性の中で進んでいく必要があります。
そこで教務部・生徒部・進路部・総務部の目標にも今年度から「対話」を入れました。生徒指導も、生徒との対話を通してより良い進路支援をしたいと考えています。授業も同様に、生徒同士、生徒と教員の対話を大切にしていこうと授業内容を変化させているところです。
ただ、対話ってどうしたら実現できるのか、その方法が不明確なところがあったので、蒲原さんに力を貸していただいて、今年度は教員研修もお願いしています。
もともと、先生同士の会話は多い職場でしたが、会話量がさらに増えたように感じますし、関係性も柔らかくなったように感じています。
——研修で対話を体験してみて、どうでしたか?
仕事をスムーズに進めるためにも、自分が大切にしていることと、相手が大切にしていることに目を向けることが、とても大切であると気づきました。
やっぱり、一緒に働く先生方の考えを聞いたり、仕事に向かう姿勢を知ることで、お互いに大切にしているものが見えてきて関係性がより良くなったと思います。
私は、自分がどれだけ自分のことだけを考えて他者と向き合っていたのかと、非常に反省しました。
これまでは、何か推し進めたいことがあったとき、なかなか思うように進まないと、「なんで分かってもらえないのだろう」と思うこともありました。でも、その目線って私中心の目線で、相手には相手の事情があるということを研修を通して再認識することができました。
相手が大切にしていることは私とは違う場合があるのだから、「この人が大切にしていることってなんだろう?」「この人が教育において、大切にしているものはなんだろう?」という視点を持つことができるようになりました。
そのような意識で人と向き合うようになったことで、私自身が発する言葉も柔らかくなったような気がします。 実は私がこうやって考えられるようになったのは、もちろん対話の研修の影響もあるんですが、一番は蒲原さんの存在が大きかったと思います。
蒲原さんと直接話したり、文字でやりとりしていると、ハッとすることが多いのです。たぶん、蒲原さんは意図して私に投げかけているわけではないと思うんですが、やりとりをしている中で気づきを得ることが多いです。
これは自分が突っ走っていたなとか、そうやって考えると気が楽になるなとか、そういう感覚になることが多くて、これこそが対話なのかなと思ったりもします。
9割がいいと言っても、1割の声を大切にしたい
——チーム担任制や対話を大切にした学校づくりはまだ始まったばかりだと思いますが、これまでを振り返って何を感じていますか?
固定担任だったときには、生徒が娘と同世代ということもあり、自分のクラスの生徒には特に口うるさくいろんなことを言って、良くも悪くも密な関わりをしていたんですね。
それが今回チーム担任制に変わって、毎日ぐるぐるローテーションで2つのクラスを担当するので、これまでと比べてスローで、生徒との関わりが薄くなってしまったことに、最初は困惑していたんです。
だけど徐々に、これまでのような夢中で生徒と関わってきた関係性も悪いとは思わないけれど、ゆっくり時間をかけながらこちらにも余裕のある穏やかな状態で、生徒たちと少しずつ関係を深めていくことも、いいなと思うようになりました。
こうして環境が変わったからこそ気づけたことなので、今回新しい取り組みに踏み出して良かったなと思っています。
またここから生徒たちと対話をしながらゆっくり時間をかけて関係性を育む中で、まだ生徒の見れていない面をたくさん見られると思うと、この先が純粋に楽しみです。
当初は、いろいろ進めて行くしかないと思いながらも、ものすごく不安で不安で。本当にうまくいくのかなとか、何か起きたらどうしようかなとか、ずっと不安でした。
いまだに不安を払拭できていないのですが、生徒たちの様子を見ているとポジティブな発言や態度が多く見られて、明るく過ごす姿もあり、少し安堵しています。
総合的な探究の時間でも、自分と向き合うところも含めて、仲間と意見を交わし、対話しながら他者を知っていくというプログラムを蒲原さんと一緒に進めていますが、生徒の反応がとてもいい感じです。
一方で、チーム担任制にしても探究にしても、改革を推進する側が過信して進めていくのではなくて、これまでのやり方と変わったことでそこに苦しみを持っている先生がいることに目を向ける必要があると思っています。
本当はもっとやりたいことがあるけれど、形が変わってしまったことでできなくなってしまったという先生もいます。
今は、チーム担任制も高校2年生や3年生では始まっていない状況なので、これまでの仕組みも尊重していくことも組織として必要なことだと考えています。9割の先生がいいと言っていても、1割の先生が苦しんでいたり、悩んでいることをちゃんと頭の中に入れながら改革を進めていきたいです。
それは生徒に対しても同様で、こちらが良かれと思ってやっていることも、それが合わない生徒も当然いると思います。私自身がこれから改革を推進していく上で、そこを絶対に忘れないでいたいです。
より良い学校に進化していくというところで改革も大事ですが、今いる先生たち皆がお互いを尊重し合えるような雰囲気は常に作っていきたいなと思っています。
——葛藤されながらも、生徒に対しても一緒に働く仲間に対しても、誰一人取り残さない視点を大切にされていることが伝わってきました。最後に、NewsPicks Educationさんのように外側から学校を支え、伴走してくれる存在について、どのように感じていますか?
蒲原さんとお話すると、学校の中では出会うことのなかった考え方やマインドに出会うことができます。
これまで何か挑戦しようと思っても、「言っても無駄だから…」と諦めてしまうこともあったのですが、そこにエネルギーをくれて、「一緒にやりましょう!」と背中を押してくれる。蒲原さんは一切否定をしない方なので、私自身本当に支えていただいています。
どうしても学校組織は内向きで閉鎖的なので、外部パートナーは外の世界を教えてくださる貴重な存在です。正直本校がここまで来られたのは、NewsPicks Educationとの出会いがあってこそで、たくさん学ばせてもらっていますし、もっと何かできるんじゃないかって思わせていただいています。
一緒に歩んでくれる支えになっているので、学校にそういう存在が本当に必要だなというのは、 おそらく私自身がこの学校の中で一番感じていると思います。
<取材・文:先生の学校編集部/写真:芝田 陽介>
生徒たちに聞きました!静岡大成高校の好きなところは?
NewsPicks Educationでは、総合の時間を担当したり、教育研修を担当したりしながら、先生方や生徒の皆さんと一緒に「学校創り」にも取り組んでいます。先生同士、先生と生徒、そして生徒同士の関係性を育む活動です。ご一緒できる学校があれば、お声がけください。学校でのNewsPicksの利活用も推進中です。