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自分にできることを考え、他者を助けるピア・サポート。「支える・支えられる」関係性が育むチカラ

自分にできることを考え、他者を助けるピア・サポート。「支える・支えられる」関係性が育むチカラ

1990年代にアメリカの教育団体が提唱したSEL(Social and Emotional Learning)を筆頭に、非認知能力を育むプログラムは世界中に存在しており、「ピア・サポート」も見えない力を育む学習の1つだ。

ピア・サポートは、精神保健の分野で始まった、同じ悩みを持つ者同士が助け合うことを出発点として始まった取り組みで、現在は学校現場にも取り入れられている。

そんなピア・サポートについて長年研究しているのが、立命館大学教授の増田梨花さんだ。日本だけでなく世界の学校における導入事例についても詳しい増田さんから、ピア・サポートが育む非認知能力や、ピア・サポートを学校で実践する価値について、話を聞いた。

写真:増田 梨花(ますだ りか)さん
増田 梨花(ますだ りか)さん
立命館大学総合心理学部/人間科学研究科教授

専門領域は、臨床心理学全般・発達臨床心理学・学校臨床心理学。今を生きるのがつらい方が少しでも笑顔になれるよう、絵本や音楽を活用した心理療法について研究している。浦島太郎のお話が大好きで、潜水艦の艦長になるのが夢だった幼少期。深海の研究をする予定だったが、今は海よりももっと広くて深い人間の「心」に潜って研究を進めている。


「支える・支えられる」関係性を育む


ピア・サポートのピア(peer)とは仲間を意味し、サポート(support)は支援を意味しています。始まりについては諸説あるのですが、同じ境遇の人たちが助け合うという意味があります。

例えば発祥といわれる精神保健福祉の分野では、アルコール依存症の患者が当事者同士で助け合ったことから、ピア・サポートは始まったとされています。

学生同士で支え合うピア・サポート制度を取り入れる大学もあり、立命館大学もその制度(上級生が下級生をサポートするオリター・エンター)が導入されています。当事者同士、経験した者だからこそ、本音を出して語り合える場が生まれるのが特徴だそうです。

私が所属している日本ピア・サポート学会では、ピア・サポートを「仲間や同輩が相互に支え合い問題解決する活動」と定義し、ここから生まれる関係性が、安心・つながり・絆を生み出し、思いやりのある学校風土をつくり出すと考えています。

当学会で大切にされている考え方として、「誰もが成長する力を持っている」「誰もが自分で解決していく力を持っている」「人は、実際に支援する中で成長する」「誰もが他者をサポートできる存在である、サポートを受ける存在である」というものがあります。

ピア・サポートにおいては、当人たちが「自分たちができることをできる範囲で周りの人をサポートする」ことが基本サポートを受けた相手はもちろん、同様に利害関係や忖度なしに相手のためを考えて行動を起こした、サポーター自身も非認知能力が育つのです。

つまりピア・サポートでは支援する・されるという一方的な関係性ではなく、双方向にメリットのある関係性が生まれるというわけです。


ネガティブな経験こそが、サポート活動に生きる


日常の営みを、SELの観点から捉える