ハイテックハイに通う3人の生徒にインタビュー!ハイテックハイは、あなたにとってどんな学校ですか?
全教科をプロジェクト型学習で学ぶハイテックハイ。
学校を訪れると、校舎の至るところにプロジェクトの展示物が掲示されており、プロジェクトに全力で向き合った生徒たちの熱量を感じる。実際にプロジェクトに取り組む生徒たちの表情は真剣そのもの。夢中になって自分が取り組むプロジェクトについて話をしてくれる生徒もいた。
生徒たちはハイテックハイという学び舎に何を感じているだろうか。ハイテックハイに通う3名の生徒に、学校や先生のこと、印象に残っているプロジェクトについて話を聞いた。
High Tech High 10th Grade
Maximilian Kulenkampffさん| 写真中央
High Tech High 12th Grade
Aaron Dominguezさん| 写真右
High Tech High 12th Grade
「ホームレス支援プロジェクト」は、私の人生を変えた忘れられないプロジェクト
ーーあなたにとって、ハイテックハイはどんな学校ですか?
私は幼少期から学生生活のほとんどをこの学校で過ごしています。ハイテックハイはとてもユニークな学校で、貴重な経験をしています。こんな経験は普通の公立学校ではできません。
ユニークな点の1つはPBLで、これは学問にフォーカスした学びではありませんが、コミュニティについてだったり、どのようなことが私たちの周りに影響を与えているのかについて学ぶことができます。それがハイテックハイの大好きなところです。
ーー印象に残っているプロジェクトについて教えてください。
たくさんあるから選ぶのが難しいですが、6年生のときに取り組んだ、ホームレス支援プロジェクトですかね。このプロジェクトは本当に私の胸を打ちました。
サンディエゴのダウンタウンでは、よくホームレスの人を見かけるのですが、プロジェクトに取り組む前は、彼らに対して怖い存在だと感じていました。
でも、一人ひとりにインタビューする機会があり、どのような経験を経て今の状況に至ったのかなどを知ることができたんです。私にとって人生を変えるような経験になり、忘れられないプロジェクトになりました。だから私は助けが必要な人を助けられるようになりたいと、今ボランティアクラブに所属しています。
私たちの目に見えていることだけでなく、その裏側にはどんな人にも物語があるということに気づきました。
ーーとても素晴らしい気づきですね。
ある年配の男性はインタビューで、銀行口座を盗まれた過去について話してくれました。その男性は家族もいなくて頼れる人もおらず、行く場所がなくて路上で生活することになったそうです。
ホームレスになるきっかけというのは、必ずしもその人自身の過失が原因というわけではなく、彼らを取り巻く環境がそうさせている可能性もあることを知りました。この男性の物語が、私を突き動かしているものです。
ーー見えているものだけで判断せず、背景に目を向ける姿勢は、ハイテックハイの先生たちも常に大事にされていますよね。
ハイテックハイでは、学期ごとにPOL(Presentation of Learning)と呼ばれる学習発表会や、SLC(Student Led Conferences)と呼ばれる生徒主導の会議が行われます。
SLCでは、生徒の家族が学校に来て、その学期ごとの学習到達度や、どんなことに取り組んだのか、改善すべき点などについて話し合います。SLCの期間はもちろん、日頃から先生方は、学校での一人ひとりの生徒の活動の様子を見届けてくれたり、何か学校内外で何か問題を抱えていないかなどと気にかけてくれたりしています。
そのため、私たちは、「今週はどんな1週間だった?」「今週あったポジティブなことを教えて」「ネガティブなことはなかった?」などを紙に書いて先生に渡すんです。そうすると、先生は「大丈夫?何かストレスを抱えている?」などと尋ねてきます。
このように、先生からのサポートは常にあり、先生は生徒と1対1で話すことを大事にしています。
ーーハイテックハイの自慢できるところを教えてください。
公立の学校とは異なり、各学年の生徒数が少なく、1学年に約100人の生徒が在籍しています。だからこそ、友達と深く交流することができます。生徒一人ひとりとコミュニケーションを取ることができ、一緒に過ごす仲間のことを知ることができるのは素晴らしいことだと思います。
公立学校出身の人たちに聞くと、同級生のことを知らないという話をよく聞きます。ハイテックハイでは、自分の学年だけでなく、上級生や下級生とも交流する機会があり、小規模なコミュニティになっています。ハイテックハイ全体でコミュニティを育てることができるのは自慢できる点の1つです。
また、プレゼンテーションの準備や話す練習をする機会が多く、自分の意見を知らない人やクラスメイトにプレゼンする機会もあります。これは私たちが常に取り組んでいることであり、続けていく価値があることだと思います。
これは公立学校では決して学べないスキルなので、ハイテックハイの非常に特徴的な部分だと思います。
ハイテックハイは、何者にでもなれるように背中を押してくれる場所
ーーいつからハイテックハイに通っていますか?
私はペルーのリマ出身で、2013年にアメリカに移住しました。
サンディエゴには4年前から住んでいるので、9年生(高校1年生の学年)から通っています。それ以前はロサンゼルスのミドルスクールに通っていました。
ーーハイテックハイはあなたにとって、どのような学校ですか?
ユニークな大学に進学するためのたくさんの機会をくれるすばらしい学校です。いわゆる国際バカロレアのような伝統的なカリキュラムを実施するのではなく、それぞれの生徒が興味のあることに取り組めるよう助けてくれるし、それができるような道を作ってくれます。
どんな人のことも邪魔者扱いしないし、アカデミックなリソースがたくさんあって、生きるために必要なスキルを教えてくれる。何者にでもなれるように背中を押してくれる感じがあって、そんなところが僕は気に入っています。
ーーこれまで通っていた学校と、違いはありますか?
大きく違います。
ハイテックハイは、まずとても親切です。これまで通っていた中学校は公立の学校でしたが、生徒の人数が多すぎて、生徒一人ひとりをケアしきれていませんでした。それに比べるとハイテックハイは小規模で、生徒の興味に寄り添ってくれて先生たちもとても親切です。そして、通常の学校にはない多くのリソースがあります。
ーーハイテックハイの先生たちは、あなたにとってどのような存在ですか?
教育者というよりも、むしろ友人のようです。全ての先生に敬意を払いながらも、彼らと話すときのトーンは、いわゆる「ボス」のような存在と話している感覚ではありません。むしろ友人のように感じられるのです。
そして彼らは、私たちの選択肢を広げようと努力し、助けてくれます。それは本当にすごいことだと思っています。
ーーこれまで取り組んだプロジェクトで、印象に残っているものはありますか?
昨年の生物学の授業で行った、がんのプロジェクトかな。
マウスの脳にがんがあって、私たちは脳のがんを治療するための方法をランダムに選択し、その治療に効果があるかどうかを測定しました。私は、ビタミンDを選びましたが、他の栄養素を選んで試すこともできましたし、ある生徒は電気ショックで脳のガンを治療しようとしていました。
私は3週間、ビタミンDをマウスの細胞に投与しましたが、少量のビタミンDでがんの増殖を止めることができたのです。がんが消えたのには、驚きました。
ーー今後のキャリアはどのように考えていますか?
このがんのプロジェクトをきっかけに、生物学を学びたいと思うようになりました。
そのためにロサンゼルスにある研究所でインターンシップをして、生物学や分子生物学を技術的な側面から探究したいと思っています。遺伝子工学、微生物学、病原体の研究など、生物学の分野で人々を助けたいと考えています。
また、医学系の学校に進学して、医者を目指すことも選択肢の1つとして考えています。
先生は脅威な存在ではなく、仲間でありメンター
ーーハイテックハイはあなたにとって、どのような学校ですか?
私は本当にこの学校が大好きです。いろんなことがプロジェクト型で学べるし、先生たちと1人の人として対話できるのがすごくいいところだと感じています。
先生方は脅威の存在ではなく、むしろ1人の人として、また一緒に活動する仲間という感覚です。上下関係ではなく、対等な関係性を築けるのは、私にとってとても大事なことだと思っています。
ーー対等な関係性というのがいいですね。
対等で、メンターのような存在ですね。彼らには、学校のことだけでなく、アルバイトのことや家族のことなど、あらゆる問題について相談することができます。
例えば、「アルバイトで大変なときがあるんだ。ちょっと話を聞いてもらえる?」と相談をすると、彼らは生徒としての僕ではなく、一人の人間として僕を受け止めてくれるのです。だから、私たちは先生たちのことを敬意を込めて、ファーストネームで呼んでいます。
Mr. SantosやMr. Figgieと呼ぶ代わりに、JohnやEricという感じです。だからとても親密な関係になることができます。
ーーこれまで取り組んだプロジェクトで、印象に残っているものはありますか?
最も印象に残っているプロジェクトは、イノセンス・プロジェクトかな。
カリフォルニアのイノセンス・プロジェクトと協力し、冤罪事件の事例を見直し、実際の弁護士と一緒に、これらの事件を再検討することができないかを検討しました。起訴で見落とされていた点や、事件を蒸し返せるような情報がないかを確認したのです。
このプロジェクトは、現実世界との繋がりを感じられるとてもクールなプロジェクトでした。
〈取材・文・写真:先生の学校編集部〉