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大学を休学し、中高生への講演を始めた19歳の環境活動家が伝える、今地球で起こっていること

大学を休学し、中高生への講演を始めた19歳の環境活動家が伝える、今地球で起こっていること

気候変動を止めることが手遅れになってしまうまで残り12年と、2018年に国連が発表したことは記憶に新しい。

気候変動を止めるには、政府や企業の大きなシステムの変化に加え、個人の意識変化が欠かせないとされる中、19歳の環境活動家が立ち上がった。

「気候変動の危機について、同世代の中高生にもっと知ってほしい」と、在籍している慶應義塾大学を休学し、講演活動を始めたのが、大学生であり環境活動家の露木志奈さんだ。

露木さんは、小学校、中学校を地元・横浜の公立校で過ごした後、高校は単身インドネシア・バリ島にある世界で一番環境に優しいと称される学校「グリーンスクール」で過ごした。そこで過ごした日々が現在の活動につながっている。

講演を始めてからたった1カ月で、30校3,000人以上の小学生から高校生に講演した露木さんの活動に迫る。

写真:露木 志奈(つゆき しいな)さん
露木 志奈(つゆき しいな)さん
環境活動家をなくしたい環境活動家

2001年横浜生まれ、中華街育ち。15才まで日本の公立学校に通い、高校3年間を「世界一エコな学校」と言われるインドネシアの「Green School Bali」で過ごし、2019年6月に卒業。2018年にCOP24(気候変動枠組条約締約国会議) in Poland、2019年にCOP25 in Spainに参加。2019年9月、慶應義塾大学環境情報学部に入学。現在、気候変動の問題を中高生に伝えるため大学を休学し、環境活動家として活動している。


地球の危機まで7年。大学に行っている場合じゃない

――なぜ大学を休学し、中高生への講演を始めようと思ったのですか?

自分と同じ世代の人に伝えたい・伝えなければいけないと思ったからです。

皆さんは“climate clock(クライメイト・クロック)”を知っていますか?この時計は、たくさんの人たちに環境問題の深刻さと期限を喚起するために、ニューヨークのユニオンスクエアに設置されたアート作品です。


出典:CLIMATE CLOCK



私たちがこのまま今の暮らしを続けると、地球はもって7年と言われています。私は地球の危機まで7年と知り「大学に行っている場合じゃない」と思いました。地球で起きていることについて、多くの人に伝える必要性を強く感じたのです。


――もともと露木さんが気候変動に興味を持ったきっかけを教えてください。

気候変動に興味を持ったきっかけは、グリーンスクールの授業「What is climate change?(そもそも気候変動って何?)」でした。

気候変動に関するビデオや資料、本を通して学んだ後、先生が「ビデオを見ただけじゃ、分からないよね」と、私たちを先進国のゴミも集まっている「ゴミの山」に連れて行ってくれました。

知ってはいたけれど、実際に見るゴミの山に、これではいけない、消費者が変わっていかなければと強く思ったのです。


――それほどの衝撃だったんですね。

それから気候変動に関する団体に参加し、温室効果ガス排出削減を締結する会議(COP)にも参加するなど、気候変動に関する情報を受信する側から、発信する側へと変わっていきました。

その背景には、2019年のCOP24のサイドイベントで聞いたグレタさんのスピーチがあります。

「Once we start to act, hope is everywhere. So instead of looking for hope, look for action. Then, and only then, hope will come(行動すれば、希望は必ずついてくる。だから行動しよう。)」

その言葉が、私の背中を押してくれました。



これらをきっかけにして、今世界に存在する国が気候変動によって消えそうになっていることへの危機感を、より強く持ちました。同時にそれらの国の存続には「私たち生活者の選択1つ1つが大きく関わっている」ということを改めて認識しました。

現在は、研究者や専門家によって、気候変動を食い止める対応策がいくつも明らかにされています。そういった科学的根拠に基づいた気候変動を食い止める行動について、私がコツコツ発信し、話を聞いてくれた人に実践してもらうことが私の講演活動の役割だと思っています。




素敵な先生方との出会いを通して、生まれた希望

――日本だと気候変動が世間の話題になりにくく、食い止めるための活動が活発にならない印象があります。そういった日本の現状を露木さんはどう見ていますか?

日本で気候変動を食い止めるための動きが活発化しないのは、気候変動に関する発信の少なさが1つ影響していると思います。

気候変動について知らなければ、インターネットで検索すらできないですから。特に私と同世代の人たちが「気候変動について学校で習わないから知らない」という現実を、私は変えていきたいと思います。

同世代の私が発信するからこそ中高生にとってインパクトがあり、直接心に届くということを、これまでの活動から実感しています。



――気候変動への危機感が強いヨーロッパと、日本における違いはなんだと思いますか?

ヨーロッパでは教育の中で、気候変動に関するトピックが日本より大きく取り扱われています。ヨーロッパでは政治の話を家庭でもするように、社会的な問題について家庭の中で話をしたり、議論をしたりするような時間が多いのだと思います。

今後は個性を大事にしながら、異なる価値観の人たちが協働する社会になっていきます。日本は協調性のある国民ですから、気候変動に対するムーブメントが一度広がれば、大きく・早く展開していけると思っています。



――活動を始めて1カ月、すでに30校3,000人以上の小学生から高校生に伝えてこられたんですよね?

そうなんです。学校での講演を始めるにあたり、SNSを通して協力してくださる先生を募りました。

すると、私の想いに共感してくださった先生方から多くの連絡をいただき、たった1カ月で、オンライン・オフライン合わせてすでに50以上の学校での講演が決まっています。

活動当初は、日本は変わらないんじゃないか?と不安でしたが、素敵な先生方との出会いを通して、私の中に希望と、日本は絶対に変わっていけるという確信が生まれました

講演をすると、生徒からの質問が止まりません。知れば関心を持ってくれるということ、そしてきちんと伝えていけば、中高生の心には届くということを実感しています。



私の講演後に「環境問題のことを考えながら、自分の将来のことを考えた。この2つが別々のテーマではなく、ものすごく影響し合うテーマであることに気づいた。」と感想を伝えてくれた高校生がいました。

私の話が、自分の人生を考えるきっかけになったことが、本当にうれしかったですね。


――先生方がすぐに反応して、協力してくださったのもうれしいですね!

はい、本当に。何者か分からない19歳の大学生が「気候変動について、中高生に伝えたい」と学校に交渉にきたら、皆さんどう思いますか?

やはり、講演の機会をいただくことが一番のハードルです。でも、SNSでの発信、ご紹介を通してすでに50校以上の先生方とやり取りを進める中で気づいたことがあります。

それは「日本にもおもしろい先生がたくさんいる」という事実です。自分が想像していた以上に、周囲の方が「志奈さんの講演を生徒に聞かせたいです」と動いてくださっています。本当に感謝しています。



知らなければ、話題にすることも、検索もできない

――露木さんの今後の目標を教えてください。

まずは日本の中高生600万人のうちの3.5%にあたるおよそ21万人に、気候変動の問題を伝えることが目標です。

20世紀に起きた多くの市民活動を調査した結果、非暴力的なムーブメントは賛同する人がその集団の3.5パーセントに達したとき、成功するケースが極めて高いという研究結果があります。

私もこの活動を一過性ではなく、きちんとしたムーブメントにしていきたいと考えています。

現在講演をさせていただいた中高生の人数は、3,000人ほどです。私の目標到達には、まだまだ私の頑張りと皆さんの協力が必要です。

中高生に限らず、小学生・大学生に話をしてほしいという依頼も受け付けています。



――気候変動を食い止めるために、一人ひとりができるアクションについても教えてください。

すぐに起こせるアクションは、「自然エネルギー電力への切り替えです。

気候変動を食い止めるためには、CO2排出量を減らしていく必要がありますが、日本全体のCO2の40%以上が「発電」によって排出されています。その原因は、普段使っている電気の約8割がCO2を排出する「火力発電」によるものだからです。

だからこそ、火力発電から自然電力に切り替えることでCO2排出量を減らすことにつながるのです。

どこの電力会社にお金を払うか選択するだけで、発電方法を選ぶことにつながります。現在は、電力会社の切り替えも、電話1本で簡単にできます。電力の切り替えは、ぜひすぐに取り組んでほしいことの一つです。

お肉を食べる選択も、検討できることの一つです。食用肉が私たちのところに届くまでに、たくさんのCO2が排出されていることをご存知の方も多いと思います。

特に牛はオナラやゲップでメタンを排出し、さらに餌を育てるために熱帯雨林が燃やされることによってCO2が大量に排出されます。家畜産業というのは、運送(飛行機・車・船など)よりも排出量が多いです。



一枚のお肉を作るのにたくさんのエネルギーがかかるので、逆にいうと一枚のお肉を減らすことができれば、大きなインパクトを生むことができます。私たち生活者の選択が行動を作り、行動が世の中への希望をつくりますからね。


――最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

読者の方には、先生をされている方が多いのではないでしょうか。先生は、子どもたちにとって一番身近な大人だと思っています。子どもたちは先生の背中を見て育っていくと考えると、先生の存在はとても大きいものだと感じています。



これからは学びを学校の中だけで完結するのではなく、学校外からもたくさん学ぶ時代になると思います。そんなときこそ、私を呼んでください!

気候変動に関する事実は、知らない状態では子どもたちの話題に取り上げられることも、検索されることもありません。子どもたちに世界の気候変動に関する事実を伝えるためには、先生がカギとなります。

生徒たちの世界を拡張するために、実際に社会的な活動をしている人を呼んで話を聞く機会をつくり、その人の活動を応援することも、気候変動に限らず多くの社会問題を解決する一助となるアクションの一つだと思います。

皆さんと子どもたちにお会いできることを楽しみに、私も講演活動を続けます。ぜひ、お話の機会をいただけたらうれしいです!

<講演のご依頼はこちら>
https://forms.gle/JrwX6vh53rdTG3B86

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