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ニュースと対話し、ニュースで対話する。NewsPicks Educationがつくる豊かな対話の時間とは?[PR]

ニュースと対話し、ニュースで対話する。NewsPicks Educationがつくる豊かな対話の時間とは?[PR]

地域・学校の境界を越えて生徒たちがNewsでつながり、学び合うNewsPicks Educationの「越境ラボ」。越境ラボでは、全国の中高生が出会い、Newsを素材に対話する集まりを定期的に開催しています。

対話による豊かな時間をつくり出す2人のファシリテーター古瀬 正也さんと澤 正輝さんに、ニュースで対話するとはどういうことか、その可能性について話を聞きました。

写真:「越境ラボ」ファシリテーター
「越境ラボ」ファシリテーター
古瀬 正也(ふるせ まさや)さん【写真左】
古瀬ワークショップデザイン事務所 代表

澤 正輝(さわ まさき)さん【写真右】
ラーニングビレッジ 代表


議論と対話はどう違う?

——最近、学校に限らず企業においても「対話」が求められているように感じます。その背景にはどのような理由があると思われますか?

個人的には、今は対話の文化と議論の文化がせめぎ合いながらも共存している過渡期だという感覚があります。それはなぜかと考えると、今は皆が迷っているからなのかな、と。

従来のやり方が通用しなくなってきていることは分かっているけれど、このやり方が正しいんだという正解が見出せているわけでもない。そういう状態だと従来のものは捨てきれないし、新しいものは取りきれないと思うんですよね。

今までの議論の文化と、これからの社会に必要とされそうな対話の文化と、どちらかの方向へ行ったり来たりしながら共存しているように感じます。

越境ラボのファシリテーターを務める澤 正輝さん

過渡期というのは同感ですね。変化が激しい時代、不確実性が高い時代が対話を必要としているように思います。もう一つ思うことは、勝者がいる一方で敗者も生まれる議論やディベートといった勝ち負けの世界観に、人々が飽きてきているのではないかということです。

対話は、共に勝つ世界。もっと言えば、勝ちも負けもないような世界。そこに新鮮さを感じて、対話という新しいゲームにゲームチェンジを起こそうとしているようにも見えます。


——「議論」と「対話」の違いをどのように捉えていらっしゃいますか?

議論は、自分の立場があって、それをいかに貫くかとか、どちらの方がロジカルかとか、そういう勝ち負けのところに根本の比重があるように感じています。

それに対して対話は、いつでもお互いが変わっていきながら、新しいものをつくっていく。その変化やプロセスを共に喜べるところに本質があるように思います。瞬間的には上下が生まれることもあるけれど、それが常に変わっていきながら、全体で見るとフラットであるという動的な変化がある。そんなイメージを持っています。

僕の中での対話とは、常に意見や意味を分かち合っていくものだと捉えています。

「私からはこう見える」という意見や意味をテーブルに置くと、相手も「私にはこう見える」という意見や意味を置いていく。自分の主観の中だけだと物の見方は狭いけれど、自分の中に他者の主観が入ってくると、自分の考えも変わっていく。なので澤さんが言う動的という感覚、すごく分かります。

一方で議論は、discussionの語源からみると「dis」は徹底的に、「cuss」は打つ・叩くという意味があります。つまり、打ち負かす、白黒はっきりつけるようなやり方が議論で、率直に感じていることを共有して意味を通し合うことで共通項を見出していく作業が対話なのだと思っています。

越境ラボのファシリテーターを務める古瀬 正也さん


ニュースは対話の入り口であり、自分や社会とつながるきっかけ

——対話を中心に置く「越境ラボ」では、ニュースを題材に対話の時間をつくられているそうですが、お2人はニュースで対話をすることにどんな価値や良さを感じていますか?

ニュースは、対話の入り口として非常に役立ちますよね。内容は何でもいいので、選んだニュースを元に対話のテーマを広げていくことができる。

また、同じニュースを全員で囲むことで、まず自分は何を感じるのかという意味で自分自身に出会い、他者と対話することで他者に出会いながら社会とも出会っていく。そしてまた新たな自分とも出会っていく。この循環が同時に起こっていくことも、ニュースで対話する魅力だと感じています。

ニュースって、誰もが知っているけれど、意外と扱い方が未知なもので、そういうものを対話の中心に置く豊かさはありますね。

一人ひとりのニュース感が全然違って、韓流アイドルのニュースに興味を持つ生徒もいれば、自分がすごく好きでたまらない虫やサッカーの話をする生徒もいる。「いや、国際問題こそがニュースでしょ」と思う生徒もいて、そんなたくさんの見方や感じ方の中で、「あ、これもニュースなんだ!」という発見を彼らはしている。

ニュースを触媒にしながら、お互いが歩み寄れるきっかけになっているんじゃないかと思います。


——実際に中高生たちとニュースで対話してみてどうですか?

単純におもしろいです。「そのニュース選ぶの?」というおもしろさがあるし、「そのニュースでその感想なの?」というおもしろさもある(笑)。

そうそう、「え、こんなこと考えるの!?」という意外性がめちゃくちゃおもしろい。意外性との出会いは、自分の考えの幅を広げたり、自分の主観性を広げたりすることにつながる気がしていて。そうやって発展していくことが非常におもしろいですよね。

以前、同性婚のニュースを取り上げて、「同性婚なんてさっさと認めちゃって養子縁組などのシステムを充実させるべきだ」と言う生徒がいました。それを受けて他の生徒が、「でも学校で親が同性婚の子がいたときに、その子はいじめにあうんじゃない?」と、生徒の立場からみたときにどうなるかという視点で発言しました。

それを受けて最初に発言した生徒が、「それは社会的な認知の問題で、教育の中でジェンダーのこともしっかり扱っていけば、同性婚の親がいても普通だと感じる社会になるんじゃないかな?」という、これまた違う視点から意見を出していて。

意外なところに焦点が当たったりしながら話が展開され、理解が深まっていくこのやりとりは、非常に対話的だし豊かだなと思って見守っていました。


持続的な変化をもたらす鍵は、パワーとラブ

——学校教育には対話の機会がまだ少なく、中高生たちも対話をすることに慣れていないのではないかとも思うのですが、ファシリテートする際に難しさなどは感じますか?

あまり感じないですね。彼らの中に、他校の生徒や大人の人と一緒に何かしたい、話したいという純粋な欲求があって、自分とは違う考え方や視点があるんだというところに彼・彼女たちの好奇心が向いているので、むしろ場を作りやすくしてくれています。

ただ、60〜90分という時間では、ニュースに対して思うことを交換して、何か新しい発見をしたり他者の視点を得て終わる受容的な対話はできても、そこから自分の考えが変わっていくとか、共に何か重要なことを見つけたりつくったりしていく共創的な対話に発展させるには、少し足りないかもしれません。


——他人と自分の意見が違うことを受け止める受容的な対話はできるけれど、そこから共創的な対話に発展させていくことが難しいという話は教育現場でもよく耳にします。学校で共創的に対話していくためにはどのようなことが必要だと思いますか?あるいは、大人はどのような関わり方をする必要があると思いますか?

学校の中で共創的な対話をするには、そもそも対話のテーマが「自分(生徒)にとって切実(な問題)であるかどうか」「自分ごとにできるかどうか」がとても大事なポイントになると思っています。

例えば、「この学校が他校と合併することに対して意見を出そう」とか「校則について見直そう」というテーマで対話をする場合は、その対話で決まった内容がダイレクトに自分に影響します。そういった当事者性のあるテーマで話をしていくときにこそ、共創的な対話になりやすいのかもしれません。

先生や大人の関わり方という観点では、対話では相手を批判してはいけないとか、自分の強い意見を言ってはいけないといったバイアスがまだあるように感じます。議論から対話へ移そうといっても、別に皆の言うことを受容する聖人君主のような人間になる必要はなくて。

世界的な紛争解決ファシリテーターであるアダム・カヘン氏が書いた『未来を変えるためにほんとうに必要なこと――最善の道を見出す技術』でも説かれているように、持続的な変化をもたらす鍵として、「パワー」も「ラブ」も両方必要なんです。

ハグするような関係性になることもあれば、取っ組み合いをするような瞬間もある。そこを行き来する中で、共創的な対話になっていくものだと思っています。

お互いのエゴや醜い部分が出て摩擦が起こる辛い対話もあると思います。そんなときにも、「対話の場だからパワーはダメだぞ」ではなく、いやいや、ときには「パワー」も大事で「ラブ」も必要なんだというあり方を貫けるかどうかが、大人も含めて試されているような気がします。

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〈取材・文=栗崎 恵実/写真=竹花 康〉